みなさんこんにちは。
いまさら聞けない、だけどサラリーマンとして知っておくべき世の中の常識について解説する 「ビジネスパーソン教養講座」にようこそ。
今回のテーマはズバリ「教養」です
今ビジネスの世界でも「教養」が見直されています。
「あなたは教養がありますか?」
と聞かれたら即答できない人が多いのではないでしょうか。
一方で、優秀な経営者ほど広い教養を身につけており、常に学び続けていると言われます。
そこで今回は、「なぜビジネスに教養が必要と言われているのか」
について様々な面から検証してみたいと思います。
そもそも教養とは
「教養」を辞書で調べると、
- 学問、芸術などにより人間性・知性を磨き高めること
- 社会生活を営む上で必要な文化に関する広い知識
といった意味が出てきます。
ちなみに英語では「リベラルアーツ」と言いますが、直訳すると「自由の技術」ということになります。
教養とは、学問や芸術などに関する幅広い知識そのものであり、またその知見を得る過程を通して得られた心の豊かさや創造力、物事に対する理解力を指します。
ざっくり言ってしまうと深くて幅の広い人間力の土台、
といったところでしょうか。
なぜ教養が必要なのか
昨今大学の教育でも「教養」が見直されています。
一昔前は学生の間で「ぱんきょう(一般教育)」と呼ばれ、いわゆる楽勝科目的な位置づけであることが多かった分野ですが、東京大学に代表されるように「教養学部」として設置されるケースも増えています。
そこでは特定の学問の枠にとどまらず、人文科学・社会科学・自然科学などの幅広い領域を総合的・横断的に学び、徐々に専攻を絞っていく仕組みになっています。
このように最終学府である大学でも幅広い教養を身につけるための人材育成が行われているわけですが、それは現代社会においては特定の分野だけに限定された人材ではなく、柔軟かつ幅広い視野を持ち新しい価値を創造できる人材が必要となっているからです。
現在はVUCAの時代と言われます。
(VUCAについてはこちらの記事をご覧ください)
変化が激しく予測困難な時代にあってビジネスで求められるのは、課題を見つけ問題を解決し、新しい価値を創造していく力です。
新しい価値を創造するためにビジネスパーソンに求められるのは
- 本質を見極める力
- 自分の頭で深く考える力
- 論理的に考え問題を解決する力
といった能力です。
教養はそれ自体が直接ビジネスで役に立つことはほとんどありません。
しかし、教養を身につけている人は、実際に会社で起こっている現象を見て、一時的な状況に惑わされず本質を見抜くことができます。
そして自分の頭で論理的に深く考え、答えを導き出すことができるのです。
教養を身につけている人は、本質を見抜くために自然と、
- そもそも何が目的なのか
- なぜそうなっているのか
- 要するにどういうことなのか
といった問いを自分で投げかけ、論理的に考え、問題を解決することができます。
そしてこの論理的に考える力は、いつどのような場面にも適用することができる普遍的な能力なのです。
似たような例として寅さんが面白いことを言っています。
甥っ子の光男が大学受験に直面した際、「そもそもなぜ勉強するのか?」という問いを寅さんに投げかけます。
それに対して寅さんはこう言いました。
「人間、長い間生きてりゃいろんな事にぶつかるだろう。
そんな時、俺みてえに勉強してないヤツは、振ったサイコロの出た目で決めるとか、その時の気分で決めるよりしょうがない。
ところが、勉強したヤツは自分の頭で、きちんと筋道を立てて、
“はて、こういう時はどうしたらいいかな?”
と考える事が出来るんだ。
だからみんな大学行くんじゃないか、そうだろう」
『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』より
まさにこういうことではないでしょうか。
教養として抑えておくべき分野とおすすめ本
教養を身につけるのに遅すぎることはありません。
しかしそれでは一体、教養としてどのような分野の知識が必要なのでしょうか。
教養として定義されている特定の分野はありませんが、主な分野として挙げられるのは次のようなものです。
歴史、哲学、文学、宗教、芸術、科学、テクノロジー、ビジネス
銃・病原菌・鉄
人類が誕生し、どのように発展していったのか、
アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。
なぜ、その逆は起こらなかったのか。
現在世界で発生している「地域格差」は何によって生じたものなのか?
1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された謎を、進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学等の様々な知見を駆使して生物学者のジャレド・ダイヤモンド博士が解き明かしてくれる本です。
ピュリッツァー賞、国際コスモス賞、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位を受賞したまさに名著で、教養を身につけるにはうってつけの1冊と言えます。
世界史とつなげて学べ 超日本史 日本人を覚醒させる教科書が教えない歴史
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とはドイツの名宰相であるオットー・ビスマルクの言葉ですが、教養を身につけるうえで歴史は外せない分野です。
また、実際に教養のある人は、自国の歴史はもちろん世界の歴史にも造詣が深いものです。
この本は、日本の歴史を世界史とつなげて学ぶことで、まさにグローバルな視野で日本の歴史を見つめ、世界の成り立ちを俯瞰することができる1冊です。
なぜ足利義満は日明貿易を進めたか?
どうしてザビエルは日本に来たのか?
この本では、弥生時代まで遡りそこから一気に現代まで「世界史と日本史のあいだ」を論じていきます。
そもそも日本人はどこから来たのか?
超グローバリストだった足利義満、戦国時代の輸出品は「武器と傭兵だった」
などなど興味深い話題がたくさん散りばめられており飽きることなく読むことができます。
予備校の人気講師であり、日本史も知る世界史のスペシャリストだから書けた、最先端の歴史研究を踏まえたまさに「大人の教養」のための1冊です。
オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る
35歳という史上最年少で台湾の行政院(内閣)に入閣、無任所閣僚の政務委員(デジタル担当)に登用され世界的に注目が集まるオードリー・タン氏。
世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾においてその中心的な役割を担った著者が、世界のメディアがコロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIと社会・イノベーションについて日本人に向けて語ってくれた1冊です。
19歳からシリコンバレーで活躍し、apple社が時給1ビットコイン(当時100万円相当)を提示した、など著者については数々の逸話が語られていますが、この本では一人の天才の思考を垣間見ることができます。
最先端のデジタル技術について触れながら同時に多様性についても改めて考えさせられる貴重な1冊といえます。
「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ
この本は、30年前の名著「失敗の本質」をビジネス戦略や組織論を専門とするコンサルタントが23のポイントに整理して、日本軍と日本企業が直面する「共通の構造」を、サラリーマンでも理解できるようにやさしくまとめた本です。
『失敗の本質』では大東亜戦争において、米軍より物量や技術面で劣っていたのではなく、日本という組織が持つ構造的・精神的な特性こそが最大の敗因であることを明らかにしました。
開戦時は多くの日本人が正確な情報を知らぬまま戦争に賛成し、開戦後も軍部の暴走によって次々と非合理な作戦が実施されました。
なぜ、日本人は「空気」によって不可思議な判断をしてしまうのか。
本書は過去の過ちをもとに、組織が陥りやすい意思決定の矛盾や、本社と現場や事業所とのコミュニケーション不全といった今日的な問題を考察するうえで重要な示唆を与えてくれます。
日本的な組織の特性は現在の会社組織にも継承され、時に大企業の凋落と衰退を生み出す大きな要因となっています。
あらゆる組織に応用することができるヒントが詰まった組織人として必読な1冊です。
哲学と宗教全史
著書の出口治明氏は、日本生命保険相互会社にてロンドン現地法人社長などの要職を経て2006年にネットライフ企画株式会社を設立し(2008年にライフネット生命保険株式会社に社名変更)、2018年より現職立命館アジア太平洋大学の学長に就任しています。
訪れた世界の都市は1200以上、読んだ本は1万冊超と言われ、歴史への造詣が深いことから京都大学「国際人のグローバル・リテラシー」の特別講義で世界史の講義を受け持つなど、まさに教養の象徴のような人物です。
私も一度、氏の講演会を聴講したことがありますが、話術も巧みで質疑応答では会場が大いに盛り上がったのが印象的です。
その出口治明氏が古代ギリシャから現代まで100点以上の哲学者・宗教家の肖像を用いて「哲学と宗教」の全史を体系的に語った1冊で、なんとなく敬遠しがちな哲学と宗教について飽きずに読み進められる1冊です。
生物と無生物のあいだ
この本は、分子生物学の第一人者でもある著者が「生命とは何か」という究極の問いをテーマに、わかりやすい言葉で解き明かしてくれる1冊です。
生物の条件は何か?という一見とっつきにくい分野ですが、何より分子生物学者とは思えぬ著者の巧みな文章構成と科学ミステリーのような構成で、読む人に新鮮な感動を与えてくれる本です。
特に生物と無生物の間の存在としてウイルスが挙げられており、新型コロナウイルスの世界的流行も相まって興味深い内容となっています。
まさに今、ウイルスは生物なのか、それとも無生物なのか、長いこと論争されいまだ決着のついていない問いについて考えてみるのも一興でしょう。
これからの「正義」の話をしよう
日本でもNHKの「ハーバード白熱教室」で社会現象を巻き起こしたハーバード大学のマイケル・サンデル教授が自身の講義を書籍化した1冊。「1人を殺せば5人が助かる。あなたはその1人を殺すべきか?」
の問いかけはあまりにも有名ですが、ほかにも
「遭難して食料が尽きた状態で、3人が生き延びるために1人を殺し食べるのは正しいのか?」
「金持ちに高い税金を課し、貧しい人びとに再分配するのは公正なことだろうか?」
など、身近な話題を題材に「正義とは何か」や「公平さとは何なのか」を問い続け、深く考えさせられます。
この本は、「正義」について書かれた政治哲学書ですが、サンデル教授は解りやすい例えを用いて、最も基本的で重要な問題を様々な角度から捉え、「正義」や「公正さ」を説いてくれます。
政治哲学をこれほど分かりやすく説明してくれる点で貴重な1冊であり、アリストテレスやカントといった古今の哲学者の主張に触れることもできるまさに教養を深めるうえでおすすめの1冊です。
以上「教養」とは何か、というテーマでご紹介しました。
引き続き「ビジネスパーソン教養講座」でも教養の一端となる情報を取り上げていきますのでご期待ください。
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