サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい(撤退編)

生活全般/体験談
スポンサーリンク

さて、ここまで「開業編」で個人買収を思い立ったきっかけから塾のオーナーになるまで、「経営編」で実際の運営について紹介してきました。

経営の素人が学習塾のオーナーとして運営を行ったわけですが、事業は予定通りにいかないことの方が多く、資金が豊富にあるわけでもないサラリーマンにとってはなかなか苦しい状況が続きました。

心身ともに疲労がたまっていました。

さらに生徒に対する責任の重さにも押しつぶされそうになりながらどうにか撤退の道を模索し始めました。

今回は、撤退を決めてから次のオーナーに譲渡するまでの過程を紹介します。

撤退

事業を買って企業価値を向上させ、購入額より高い価格で売却して利益を得る、というのが一般的な投資ファンドの事業です。

その場合は早くて3年程度、遅くとも5年程度ではいわゆるExitまでのサイクルを回します。

私の場合はそんなかっこいいものではなく、経営に行き詰まり藁にすがるような気持ちで思いついたのが、再び個人買収で次のオーナーを探す、というアイディアでした。

企業価値は向上するどころか、赤字経営ですので損失は発生します。

それでもそのまま塾をクローズする場合に比べ、賃貸にかかる違約金を大幅に軽減できるかもしれないという希望があります。

そこで、早速M&Aサイトに登録しました。

今度は購入する側ではなく、売却する立場です。

人間反対の立場になってみると、またいろいろなものが見えてくるものです。

今回「売る立場」になったことで、売り手の目線、つまり事業のどのような点をアピールするべきか、長所はどこで短所はどこか、新たな視線で事業を見直す機会にもなりました。

法人個人、別の業態の事業主など幅広い買い手像を想像しながら改めて多角的に事業を見つめ、虚偽の無いように情報を登録していきます。

果たして問い合わせがるものか、、、ここで反応がない場合はかなり厳しい状況に追い込まれます。

登録した直後は不安もあり、数時間おきにサイトを確認していました。(問い合わせがあればメールに通知が来るのですが)

ちなみにこの手の個人買収仲介サイトは、サイトによっても異なりますが売り手はほとんど費用は掛かりません。

基本的には買い手が成約時に譲渡額に応じた手数料を払うという料金体系となっています。

そのため、事業購入時は手数料を支払う必要がありましたが、今回は売り手なので費用が掛かりません。

この点では精神的にも負担は少なく、いくつかのサイトに同時に掲載を行っていました。

(現在は料金システムが変わっているかもしれません)

交渉

その後心配していたものの、数日後に1件、2件と問い合わせが入るようになりました。

小さな法人であったり完全な個人事業主であったりと、やはり相手方の事業形態は様々です。

まずは反響があったことに胸をなでおろしながら丁寧に問合せに対応していきます。

この時点ではお互いに実名は伏せていますが、これも買い手側の経験を活かし、この時点からできるだけ誠実に事業内容を説明します。

後になって事実と違うことが発覚すると余計に印象が悪くなってしまいます。

また、なによりこの事業を引き継いでもらい、子供たちの学習環境を安定的に維持してくれることが何よりも望ましいことでした。

結局10件弱の問い合わせがあり、最終的に吟味してその中の3名と実名交渉を行うことにします。

これも後になって振り返ればなんとなく本命は決まっていましたが、他に選択肢がないという状況は避けるためあえて複数の候補者と実名交渉に入るようにしました。

候補者はいずれも何らかの形で塾経営や子供に関連する仕事をしている方でしたが、自身の反省を踏まえ個人経営者ではなく、既に塾の経営を行っている法人を本命として交渉を進めました。

相手方は少し離れた場所ですが、小中学生向けの塾を二か所経営しており、言ってみればエリアを超えて規模拡大を目指す買収計画だったようです。

既存の事業が(多分)軌道に乗っており、ノウハウ、人材ともにそのまま流用することができるため安定感もあります。

私が言うのもなんですが、少なくとも個人で、しかも未経験で参入した私よりははるかに安心感もあります。

私が開示した毎月赤字状態の会計状況についてもそこまで大きなネガティブポイントとならなかったようで、交渉も後半になると「むしろよく踏ん張ってきましたね」とねぎらいの言葉もいただくような状況でした。

私の場合はカリキュラムや教材の見直しもせずほとんど前オーナーのノウハウを踏襲しましたが、彼らはそういったノウハウも持っており新たな価値を加えることもできるため、既存の生徒にとってもメリットもあります。

引継ぎ

そのようなわけで交渉も早い段階で候補が絞られ、私の時と同じようにスタッフの顔合わせなども順調にこなしていきました。

また自身の失敗を踏まえ、今回は早い段階で不動産の仲介会社に連絡を行い、候補者を絞った際には早々に顔合わせを行う段取りを組んでいました。

さらに実際に譲渡を行う際の物件の譲渡範囲や資産価値、現場保全などといった打ち合わせも始まります。

全くの素人の私と比べ既に同種の事業運営を行っているその譲渡候補者はそのあたりも慣れていて、仲介業者とも手際よく確認を進めてくれました。

立地がいいことと50名程度の既存生徒がいることは彼らにとっても魅力的だったのでしょう。

さて、ここまでくると後は譲渡額の交渉のみです

実のところは毎月の赤字で最初に確保していた資金がすでに無くなっているわけですが、最後の力を振り絞ってせめて冷静を装って価格交渉を行います。

彼らにとっても既存の生徒が欲しいことはある程度感じていましたので、当初自分が購入した際の譲渡額を下限に定め交渉を行いました。

その場合、累計の赤字額はほとんどそのまま残りますが、当初の買収費用は回収しあとは自分への授業料だと腹を括って契約締結にこぎ着けることができました。

同時に賃貸契約における違約金発生の要件を回避することができたため、違約金支払い義務も消滅したことがなにより幸いでした。

生還

最後の数か月は常にお金の不安が付きまとい、日々の生活の中でゆっくりリラックスすることもできない状態がつづいていましたので、契約が成立した帰り道に思わず空を見上げたのを今でも覚えています。

ちなみになんですが、この一連の話は副業、つまり本業の会社員をこなしながら、主に終業後や土日の対応でしたので体力的にも限界に近づいていました。

今振り返ってもよくそんなこと始めたなあと我ながら感心します。いまでは本棚にある一冊の本を見ると思い出す程度ですが、、、

さて、こうやって当日のことを振り返ってみて、今後開業や起業を考えている方に個人事業を始めるために必要な3つのスキルと「実は一番大事なこ」について最後にお伝えしたいと思います。

振り返り

まずは起業にあたって必要なスキルについてです。

もともと塾経営のきっかけとなった著書にも記載されていましたが、サラリーマンがこれまでの業務で身につけたさまざまなスキルは、小さな組織を経営する際に役立てることができます。

振り返ってみると、自分に足りないスキルが明確にわかりました。

もし今後独立や事業経営を考えている方がいるとすれば、次の3つのスキルを身につけるか、身につけている人のサポートを受けると成功の確率は上がると思います。

個人事業主に必要なも3つのスキル

  • 会計スキル
  • webマーケティングスキル
  • ぶっちぎりのコミュニケーションスキル

この3つをすべて備えている方はなかなかいないと思いますので、3つ全部は無理でもこの中で1つ、できれば突出したスキルを磨いておくといいと思います。

それでは簡単に説明していきます。

会計スキルについては言うまでもありませんね。

最初から税理士さんと契約できる場合はお任せでも構わないと思います。

不得意なことはお金を払っても人に任せて、自分は得意なことに時間を割いた方が断然生産性が高くなります。

会計ソフトなどを使って自分で経理業務を行い確定申告までする場合は、会計「知識」だけではなく「実務経験」があると有利です。

会計ソフトを活用することである程度は自動で帳簿作成、売上管理ができますが、個人事業主の経営は日々判断、特に支払いに関連する判断を求められるシーンが多々発生します。

個人事業は仕入れや様々に発生する経費もそうですが、損益分岐点を常に把握し売上を正確に管理することが求められます。

そしてwebマーケティングスキルも今や必須ですね。

規模が小さい場合はなおさらです。

塾のような教室や習い事も、現在ではホームページを見て問い合わせを行うケースがほとんどで、訴求力のあるサイトやブログ、SNSの発信は絶対に必要です。

ちなみに学習塾で最も効率がいい集客方法は「既存生徒からの紹介」です。

昨今はwebサイトの立ち上げも容易になり、特別な知識がなくてもそれらしいサイトを作成することができるようになっています。

ただ、そのサイトを集客ツールとして最大限に活用するには、SNSとの連動ブログの発信、サイト訪問者の分析などのwebマーケティング知識が必要となってきます。

それはおそらくどのような業界でも同じでしょう。

また、塾や資格対策などの各種講座を行う業界では、コロナ禍以降はそのままオンラインに学習コンテンツを移行するケースもあり、最低限のITスキルは必須条件になってきます。

3つ目のコミュニケーション能力も外せませんね。

生徒自身はもちろん、習い事では保護者にいかに好感を持ってもらうか、ということも重要な要素になってきます。

また、スタッフはもちろん、入居ビルのオーナーや出入りの業者さんとの折衝も大事です。

あらゆる関係者とのコミュニケーションを普段から円滑に行うことができれば、新規顧客獲得の他、不測の事態にも対応しやすくなるのは言うまでもありません。

おもての運営はスタッフに任せてオーナーは裏方に徹する、というパターンもあり私も当初はそのように考えていましたが、個人事業の規模ではやはり代表者の顔が見えていることは重要な要素になってくると思います。

雄弁である必要はありませんが、どのような方とも笑顔でコミュニケーションを取ることができれば、自然と応援してくれる人が増えてきます。

一番大事なこと

さて、そして最後に「実は最も大事なこと」ですが、それは「その事業に対して本気かどうか」ということです。

月並みですが共感いただける経験者の方も多いのではないでしょうか。

「経営編」でラクスルを紹介した際に書きましたが、私は当初やろうと思っていたパンフレットのポスティングや小学校前でのビラ配りなど、正直に言いますとどれも最初の2~3回程度で、後はやらなくなってしまいました。

ラクスルで折り込み広告などを打っていたこともあり、「コストをかけているのだから時間を買ったと思ってその分で別のことをやるべき」などと自分に言い訳していましたが、今思えばやはり「本気ではなかった」ということに尽きると思います。

言い換えれば死ぬ気でやっていなかった、ということです。

実際会社員としての本業があり、対応できる範囲にも限度がありましたが、それでも本気であれば、生徒を獲得するため毎週土日のどちらか30分だけでもビラを配るなどできることはあったように思います。

これも先ほど「自分の授業料」と書きましたが、そのことを実感しただけでも収穫があったと今は考えています。

この時の反省を踏まえ着々と事業所得を得るため今も準備していますので、また記事にも書いていきたいと思います。

おわり

コメント

タイトルとURLをコピーしました