さて、あれよあれよという間に普通のサラリーマンが個人事業主として塾のオーナーとなったわけですが、その経営は出だしから簡単ではありませんでした。
既存の学習塾を従業員も一緒に引き継いでいるため、基本的には従来通り運営をしていればいきなり大きな赤字になるようなことはありません。
譲渡時点で約50名の生徒がいましたが、自分で塾を開いて50名の生徒を集めるには数年はかかるはずです。
最初から一定の収入があるというのは大きなアドバンテージです。
反対に言えば従業員と、通ってくれている子どもたちに対する責任も大きなものです。
これまで一人で取り組んで一人で完結していた副業とはそのあたりが大きく違います。
また、前オーナーは高齢ということもありほとんど営業をしていませんでしたので、チラシを配布したことで一定の反響もありました。
ただ、反対に前オーナーが担当していたクラスを新たに採用したアルバイトに対応してもらうためその分は確実に赤字になります。
それもあって、経営を引き継いでから数か月で赤字が毎月10万円弱まで拡大していました。
もちろんある程度は想定済みで、その分は新たな営業と事業展開でカバーすることを計画していました。
その新たに掲げた新事業展開というのが、既存の国語算数に英語とプログラミングを加える、という内容です。
経営
このころちょうど小学校の英語教科化が行われていました。
同時に大学入試も変わり英語では英検やTOEFLなどの外部試験が採用されることが決まっており、必ず小学校英語教育の需要が高まるだろうと見込んでいたわけです。
(追記:結局入試への外部英語試験の採用は見送りとなりました)
ちなみに、小学生向け英検対策についてはこちらの記事もご覧ください↓。
また、同時にプログラミング教育が開始されることも決まっており、小学校でプログラミングを習う子どもが増えているという事実もありました。
今回目玉に据えたこの新たな営業方針ですが、結果としては外れることになります。
不動産契約関連で予期せぬ事実が発覚し計画に大きな影響を受けたこともありましたが、最終的に撤退を決意したのはこの本業での事業計画が軌道に乗らなかったためです。
塾のあったエリアはいわゆる中流家庭以上の地域で教育熱も高いエリアでした。
そのため、算数国語の塾に通わせている親であれば英語も当然習わせるだろうと予想していたわけです。
まず英語とプログラミングを加えることでこれまでリーチできなかった新規の生徒を獲得する。
さらに既存生徒の一部も英語とプログラミングを追加受講し一人当たりの単価が上がる、という筋書きですね。
ところがこれが見事に外れます。
理由は既存生徒の多くが既に英語の塾にも通わせていたためです。
国語算数とは別にしっかり英語対策をしていたということです。
そのことに気づいたとき、「なるほど」と自分でも妙に納得したことを覚えています。
プログラミングについては一部の保護者からは関心が高かったものの、物理的に教室の数が限られる中、子どもが通える時間に新たに教室を確保することができませんでした。
そんなこともあって、募集チラシには「英語」「プログラミング」の文字を入れてしまったものの、実際にクラスの運営がままならない、という混乱も発生してしまいました。
計画を立てたものの、現実のオペレーションに落とし込むところが抜けていたわけです。
もちろんチラシ配布の効果で新規に入会した生徒も数名いましたが、毎月の赤字を解消するほどの数を獲得することはついにできませんでした。
ところで「赤字」というのは経済ニュースではよく聞かれる言葉です。
そのためあまり意識して考えることはないと思います。
ところが個人事業で赤字というのはどういうことかというと、毎月の支払をオーナーが自分の財布から行う、ということです。
ごくごく当然のことで、もちろん事業運営資金として分けてはいるわけですが、毎月毎月そこから従業員の給与などに支払いを続けると、素人経営者には徐々にダメージが蓄積してきます。
会計上もそうですが、やはり精神的にもかなりこたえます。
資金力に乏しい個人事業主にとって、5万円、10万円という規模のお金がいとも簡単に消えていく状況は、塾経営を続けていくモチベーションを奪うのに十分な金額でした。
失速
そういったわけで毎月赤字ながらもどうにか1年を迎えようとする頃、気持ちの中で徐々に 「撤退」の2文字が固まっていくのが自分でもわかりました。
そのころになると、もちろん給与未払いのような状況はありませんでしたが、余裕がない雰囲気はスタッフにも伝わり、徐々にぎくしゃくした空気が漂うようなこともありました。
また、「貧すれば鈍す」と言いますが、業務の中で指示や判断に自分でも自信が持てなくなっていくのを感じることもありました。
この頃にはますます賃貸契約の解約条項が重くのしかかり、さらに実際にこの塾に通ってきてくれている子供たちを目にすると、オーナーとしてその責任もまた大きいことに気づかされます。
そんな思いで胃も痛くなり始めたころ、この事業のスタート地点となった個人買収のサイトのことを思い出し、またこれを利用して売却すればいいのではないか、ということに思い当たりました。
その時点から撤退に向けて動き始めるわけですが、初めて事業を運営するうえで大変役に立ったサービスがいくつかありますのでここでご紹介します。
ここに記載する以外にも利用したサービスもありますが、実際に使ってみてよかったものを3つ厳選しています。
3種の神器(ツール)
・会計ソフトfreee
無料で使える開業書類作成サービス「開業freee」まず1つ目は会計ソフトfreeeです。
これは会計知識のない素人でも確定申告まで行うことができる、という会計ソフトです。
無料で開始することもできますが、やはりまがりなりにも事業を行うなら有料版のほうが安心です。
先述の通り開業届に必要な数種類の書類を一瞬で作成することができる他、日々の経理事務を簡単に行うことができるようになっています。
私の場合は、引継ぎと同時にコスト削減のため税理士さんとの契約も解除したためこのソフトをメインに活用していました。
もし簿記の知識があれば、よりスムーズに会計処理を行うことができるはずです。
freeeでできること
1、経理管理(帳簿作成)
請求書の作成、発行、郵送、入金確認や見積書、納品書の作成まで対応できます。
また、ネットバンキング対応の銀行口座やクレジットカードを登録しておくと、自動同期が行われて会計データを取り込むことができますので、取引記録を帳簿として出力することが可能です。
2、売上管理
銀行口座やクレジットカードの明細からデータを自動取り込んだり、領収書やレシートの読取りが可能なため経費精算もスムーズに処理することができます。
口座やレジと同期させることで、日々の売上を自動で登録することも可能です。
3、確定申告
確定申告には、青色申告と白色申告がありますが、freeeはどちらの確定申告にも対応しています。
いくつかの項目に答えていくことで確定申告書のデータが作成されますので、特に「初めて確定申告をする」という場合は強い味方となります。
・ラクスル
ラクスルならプロ並みのチラシが安い早い!2つ目はラクスルです。
CMでもおなじみですが、豊富なテンプレを利用すればいきなりプロっぽいチラシを作ることができ、なんとさらにそれをそのまま新聞折込まで依頼できるため、大変便利です。
おかしないい方になりますが、この便利なサービスのおかげで「自分の足でポスティングを行う」という気持ちが徐々になくなり、楽をしてしまいました、、、まさに会社名のまんまです。
また、それなりにおしゃれな名刺作成サービスもあり、ここで初めて「代表」という肩書の名刺を作り思わずにやけたのを覚えています。
ラクスルでできること
1,デザインサービス
ラクスルでは、名刺・パンフレット・ポスター・折込チラシなど、事業を行う上で欠かせない宣伝用の印刷物を安いコストで製作することが可能です。
印刷自体はもちろん、各種印刷物のテンプレートが豊富に揃っているため、デザインから自分で行うことが可能です。
初心者でもプロのような名刺やパンフレットを作成することが可能です。
2,印刷サービス
自分でデザインした製作物の印刷をそのまま発注することが可能です。
特徴的なのは、紙質、大きさ等の仕様を細かく指定することができ、さらに部数と納期によってその費用を一覧表で確認し、予算に合わせて発注することができるようになっています。
3,集客(配布)サービス
さらに驚くのが、そのように作成したパンフレット等をそのまま新聞折込チラシにして配布したり、ポスティングの依頼をすることができます。
もちろん希望するエリアと配布時期を指定することができるうえ、費用を見ながら設定できるため、予算に合わせた宣伝を行うことが可能です。
・Indeed
3つ目はIndeedです。
これもCMでおなじみですね。
他のサービスも無料で開始することができるようになっていて、機能追加やよりグレードの高いサービスを開始するには有料版へ、という仕組みでIndeedもそこは同じです。
無料で求人を掲載することができるだけでもありがたいですが、私の場合はその掲載した求人に8名程度の応募がありその中から採用することができたため、最初から最後まで1円も払わずにアルバイトの採用ができました。
無料の求人広告記事はどんどん掲載順位が下がる、という話でしたが、たまたまタイミングが良かったのか、応募者がうまく見つけてくれたのか、本当にラッキーでした。
Indeedでできること
1,無料求人掲載
これは説明するまでもありませんが、自社情報とあわせ「雇用形態」「給与」「仕事内容」「求める人材」など用意された項目を入力していくだけで、求人情報をIndeed内に作成・掲載することができます。
2,求人探索エンジン
Indeedはそもそも、求人探索エンジンとしての機能を持っています。
Indeedには、求人サイトや企業の採用情報ページから集めてきた何百万もの求人情報が掲載されているため、求職者はさまざまな求人サイトにアクセスすることなく、Indeed内で求人情報を検索できます。
3,企業ページ
自社の採用サイトをIndeed内に無料で作ることができるサービスです。
採用サイトを持っていない企業でも、企業ページを作成することでその企業の魅力を画像やテキストなどで伝えることができるようになります。
以上、個人事業主に便利なサービスをご紹介しました。
それでは最終的にどのように撤退したのか、撤退編でご紹介します。
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