【ビジネスパーソン教養講座】量子コンピュータってなんですか?

ビジネスパーソンのための教養講座
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みなさんこんにちは。

いまさら聞けない、だけどサラリーマンとして知っておくべき世の中の常識について解説する「ビジネスパーソン教養講座」にようこそ。 

今回取り上げるのは「量子コンピュータ」です。

量子コンピュータ、、、量子、、、、、、???

これは全然イメージが湧かない方もいると思います。

量子コンピュータとはざっくり言うと、、、

ざっくり言うと!

量子コンピュータとは次世代の超高速計算機です!

従来の何倍もの速度で計算ができるため、新薬や新しい材料の開発など「膨大な計算が求められる分野」で目覚ましい発展をもたらすことが期待されています。

また、急激に少子高齢化が進みさらにグローバルな競争が激化する中で、ビジネスや生活において革新的な変化を生み出す可能性を秘めています。

先に言ってしまいますと量子コンピュータはかなり地味です。

実用化されれば既存の産業や社会全体に劇的な変化をもたらす、、、のですが

VRとかドローンタクシーなどの次世代技術のように直接体感できるものではなく、一般人には見えないところで働くので、いまいち身近に感じるのは難しいかもしれません。

それでも日本でも国をあげて取り組んでいる事業でもありますので、

一体量子コンピュータとは何なのか?」

実現すればどんなことができるのか?

について紹介していきます。

量子コンピュータとは

量子コンピュータとは、ざっくり言うと次世代の超高速計算機です。

量子力学の現象を情報処理技術に適用することで、従来型のコンピュータでは容易に解くことのできない複雑な計算を解くことができるコンピュータのことです。

もう少し説明すると、「量子重ね合わせ」「量子もつれ」といった量子力学の現象を利用して並列計算を実現するコンピュータです。

簡単に言うとこれは、これまで幾通りものパターンを順番に計算していたのに対して、すべての計算を同時進行的に進めることができてしまう、といったイメージです。

そのため従来型のコンピュータでは膨大な時間を要する問題でも、量子コンピュータでは短い時間で解くことができるわけです。

さらに量子コンピュータは、従来のスーパーコンピュータと比較して電力の消費量をはるかに小さく抑えることが可能です。

地球全体で増加し続ける電力消費が問題となる中、消費エネルギーが少ないことも量子コンピュータの大きな利点と言えます。

ただ、量子コンピュータは現在ではまだ実用化されていません。

現在Googleなどの大企業や各国の研究機関が総力を挙げて開発を進めている状態です。

ちなみにどうでもいいのですが、「量子コンピュータ」に対して、従来型のコンピュータのことを「古典コンピュータ」といいます。

この「古典コンピュータ」ってネーミングはなんか違和感がありませんか?

「最新のユーズドカー」みたいな。

ただ実験では既にその計算の速さが証明されています。

具体的にどれくらい早いかというと、数万ものGPU(画像処理半導体)と数千個のCPU、さらに10ペタ(ペタは1000兆)バイトのメモリーを持つ最新のスーパーコンピュータで1万年かかる計算を、量子コンピュータは200秒で実行できてしまったそうです。

これは2019年にGoogleによって実証されています。

量子力学とは

 量子コンピュータを説明するには、量子力学について触れなければなりませんが、その前に「量子」とは何か説明します。

人間の体や身の回りの物質を形づくるのは原子です。

その原子は電子や陽子、中性子というものでできています。量子とはこうした原子レベル以下の物質エネルギーの粒のようなものと考えて構いません。

そして「量子力学」とは、その量子の動きを説明するために発展した理論です。

量子力学によると、原子や電子、光の粒である光子などの微小なものや、超伝導などの非常に低温に冷やした物質においては、私達が普段目にしない不思議な現象が起きるということが知られています。

その不思議な現象というのは、例えば量子力学特有の物理状態である「重ね合わせ状態」「量子もつれ状態」と言われる状態のことです。

ではこの「重ね合わせ状態」や「量子もつれ状態」というのはどのような状態なのでしょうか。

「量子もつれ」についてはあまりにも難解で、私「とあるサラリーマン」も人に説明できるほど理解できなかったので、ここでは比較的理解しやすい「重ね合わせ」について説明します。

従来のコンピューターでは、情報を「0」か「1」という2通りの状態で表す「ビット」を最小単位として扱っています。

これに対して量子コンピューターでは、量子力学の基本性質である「0と1の両方を重ね合わせた状態」をとる「量子ビット」を使って計算します。

「0と1の両方を重ね合わせた状態」とは、「0であり、かつ1である」という状態のことを言います。

1量子ビットは同時に「0」と「1」の両方になりえるわけです。この2つまたはそれ以上の状態を同時に表すことができる性質を、「重ね合わせ」と呼びます。

そしてこれらの量子力学特有の物理状態を積極的に用いてコンピュータを作ろうというのが、量子コンピュータです。

だから、従来のコンピュータが順番に算出していた計算を、量子コンピュータでは同時進行的に進めることができるわけです。

なんか頭痛くなってきますね。

「2つまたはそれ以上の状態を同時に表すことができる性質」って、例えるならジャンケンでグーとチョキとパーを同時に出せるぞ、みたいな感じ、、、いや違うかもしれません。

ただ、何万通りもあるような計算を従来のコンピュータが順番に計算していたところ、量子コンピュータは同時に進めてしまう、だから早い、とそんなイメージであるようです。

量子コンピュータの開発状況

量子コンピューターは現在ではまだ開発の途中です。

世界中の研究者が取り組んでいますが、実際に利用できる段階にはなっていないのです。

ただ、その活用方法を研究している企業や大学などの研究機関はたくさんあり、世界中で壮絶な開発競争を繰り広げています。

グーグルやインテル、アマゾン、アリババといった世界の名だたるIT企業もその研究開発競争に参画しており、人材の奪い合いも起きつつあるのが現状です。

米国では

  • 「量子情報科学の国家戦略概要」を策定
  • 量子情報科学に関する法律を制定
  • 毎年2億ドル以上の研究開発投資等を戦略的に展開

EUでは

  • 「量子技術フラッグシップ最終報告書」を策定
  • 2018年 から10億ユーロ規模のプロジェクトを開始

 中国では

  • 量子コンピュータを重大科学技術プロジェクトとして位置づけ
  • 量子情 報科学国家実験室の整備等のために約70億元を投資

日本でも東京大学がIBMと連携し、2021年7月にアジア初となる商用量子コンピューターの稼働を開始したことを発表するなど日々研究が進んでいます。

このように日本も国をあげて研究開発とその実用化に向けて取り組んでいるわけですが、それを後押しするように内閣府「量子技術イノベーション戦略」として方針を打ち出しています。

その中では次のようなことが述べられています。

量子技術は、我が国の経済・社会等を飛躍的・非連続的に発展させる鍵となる革新技術(コア技術)であり、国として、確固たる技術の基盤確立を 目指すとともに、これらを我が国が抱える様々な課題の解決や、将来の持続的な成長・ 発展等に確実に結びつけていくことが不可欠である。

量子コンピュータで何ができるのか?

では一体その量子コンピュータで何ができるのでしょうか。

革新的な技術ということは分かりましたが、具体的にどんな分野でどんなことができるのでしょうか。その点について順番にご紹介します。

まず現時点で、量子コンピューターの活用により飛躍できる分野として挙げられるのは、「材料科学」「新薬開発」の2つの分野です。

これらの分野では、無数にある組み合わせをシミュレーションするために膨大な計算が必要になりますが、まさにこの膨大な計算は量子コンピュータが得意とするものです。

例えば化学品は無数に種類がある分子の組み合わせですが、 量子コンピューターを使えば、分子設計などのシミュレーションを今よりはるかに高速に実行することができます。

これにより生まれた新たな材料を使い、電気自動車に搭載するバッテリーや食料生産に不可欠な肥料を効率よくつくる触媒などを早く世に送り出すことが期待されています。

実はその他の分野では、具体的にどのように活用するかまだ固まっていないのが現状です。

繰り返しになりますが、まだ完成していないのでわからないわけです。

ただもちろん先ほどの通り、各国、各企業で研究開発が進んでいますので、活用のイメージは形作られてきています。

国内においてはその用途について、先ほどの「量子技術イノベーション戦略」の中で次のようにまとめられています。

 ① ビジネスにおける生産性の飛躍的向上

日本では急速に少子高齢化が進み労働人口の減少が大きな課題となっています。

働く人の数が急速に減っているので、その分生産性を向上させないと現在の国の水準を維持することができなくなる恐れもあります。

これまでITやAIによって産業が大きく進化したように、 「量子革命」を通じて産業競争力を強化することが期待されています。

具体的には、製薬、化学素材、材料をはじめ、情報通信、製造、金融、運輸、半導体、デバイス製造、蓄電・省エネ・創エネといった幅広い産業で新たな価値を創出することを目指しています。

 ②健康・長寿社会の実現

同じく少子高齢化により、日本国内には多くの高齢者が生活するようになります。このままいくと2065年には、全人口の約25%が75歳以となる見込みです。

4人に1人が75歳以上ということで、まさに「超高齢化社会」です。

そこで量子技術を用いることで革新的な医療や健康管理を実現し、世界に冠たる健康・長寿社会を実現することが期待されています。

量子技術により生命現象の本質的理解が進み、新たな治療法や創薬や高精度な早期診断・モニタリングなど、生命科学・医療の分野でも飛躍的発展を実現することを目指しています。

③ 国民の安全・安心の確保

量子技術を応用した通信・暗号技術により、高度なセキュリティ社会を実現し、国及び国民の安全・安心を確保することが期待されています。

実は量子コンピュータは、暗号解析、簡単に言うとパスワードを見破る手段としても大きな力を発揮します。

そのような目的で量子技術が使われる可能性もゼロではありません。

近い将来訪れるそのような世界において、「量子通信・暗号技術」により、機密性・完全性を有するセキュリ ティ環境を構築していく必要があります。

その際は、他国に依存しない日本独自の技術基盤を確立し、国及び国民の安全・安心を確保することが求められます。

以上、量子コンピュータについてご紹介しました。

原理はよくわからない量子コンピュータですが、「量子革命 」ともいわれるほど、革新的な技術であることは間違いなさそうです。

おそらく我々一般人に直接触れることはないと思いますが、自分が所属している業界にも大きな変革をもたらすかもしれません。

今後数年のうちに量子コンピュータの実験や実用化のニュースが流れるはずですので、その際は是非注目してみてください。

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